DEPPA少年の日記

某テレビ局の会社員。27歳。「小説だからこそ本当のことを書ける」という小説家の言葉を参考に、あえて匿名でブログを書いています。28歳の誕生日までのカウントダウン方式を採用。

254日(Twitter時代のテレビづくりを考えた「国際信州学院大学」案件)

そんなにネットニュースに対してアンテナは張っていない。だけどぼくにも届くくらい、Twitterでにぎわいをみせたのが、いわゆる「国際信州学院大学」案件である。

かんたんにいうと手が込んだフェイクニュース。うどん屋さんの団体キャンセルのツイートが発端となる。50名で予約いただいていたのに、こちらから電話したら一言キャンセルだと。二度とこないでください、国際信州学院大学の教職員さんたち。この内容は画像とともにつぶやかれ、瞬く間に広がっていった。

なにがフェイクだったか。実はキャンセルなどされていなかったのかいろいろ考えたけど、その上をいっていた。そもそもそんなうどん屋もなければ、そんな大学さえもなかったのである。国際信州学院大学という一見ありそうな大学名。

調べれば、今年の1月から仕込みのツイートが散見され、わざわざアカウントをつくっている。大学の組織にある図書館や、生協。教授もいれば生徒もいる。サークルのアカウントもある。

公式サイトも用意されており、パッと見ると「本当っぽい」のだが、よく見るとふざけた名前の学長がいたりして、手の込んだフェイクということがわかった。数ヶ月前から同時並行で事実となった国際信州学院大学周辺の事柄は、うどん屋のツイートきっかけに明るみに出る。実は、フェイクだったというネタが、相乗効果で拡散をされたのが本案件。

このようなフェイクニュースがあることによって、オオカミ少年のように、事実が事実として受け入れられずらくなることや、悪意があるなど、この案件についてはいろんな見え方があると思う。

ただ一ついえるのが、仮にバラエティ番組的な角度から切り取れば、この手の込みよう、汗のかき方は、Twitter時代のコンテンツづくりにとって、一つの示唆を与えてくれるように思う。

まずぼくが思い出したのが「めちゃイケ」の濱口優だましシリーズの桐堂大学だ。大学受験に「おバカ」な濱口氏が挑戦するにあたって、本人に架空の大学があるように思わせ、そこに受験させた。オチは入学式だった。当時、とてつもなく予算がかかったらしい。たしかあれは00年代初頭だったと思う。つまりTwitterなどSNSが出る前だ。

いま、同じような企画をやったとしよう。観ている側がSNSを使わなければ、当時のようなテレビの見方で楽しめるかもしれないが、どっきりをかけられる側の演者の「だまされるリアル」がそこにない。つまり、そんなのTwitterで調べれば、どっきりかどうかは一発でわかるだろう、と。そういう思考にわれわれはどうしてもなってしまう。

携帯電話の普及によって、いつでもつながれる環境になった。そうしたことで恋愛のドラマにおいて「物理的なすれちがい」を演出することがむずかしくなっている。ぼくはTwitter以降、バラエティ番組において、Twitterをはじめとして見える化時代の台頭が、かつてのテレビづくりを古いものにしてしまったと考えていた。

なかば悲観的にとらえていたけど、国際信州学院大学案件をきっかけに、いまの時代だからこその「見せ方」はあるかもしれない。そう思うようになった。つまりTwitterで可視化してもその内容にからくりがあれば、演出という魔法をかけることは不可能ではないということ。

もちろん悪意の色が強かったり、反社会的なことをわざわざやる必要はない。だけど、一つの方法として、ヒントを見た気がしたのである。