DEPPA少年の日記

某テレビ局の会社員。27歳。「小説だからこそ本当のことを書ける」という小説家の言葉を参考に、あえて匿名でブログを書いています。28歳の誕生日までのカウントダウン方式を採用。

260日(ワークショップという選択について)

ワークショップという言葉を思い浮かべる。

映画でいえば大根仁監督「恋の渦」という傑作の映画はワークショップを通じて製作された。役者が学びながら出演するわけだが、なんと役の決まった方が途中で投げ出してしまうというアクシデントにも見舞われる。しかしその代役が、これまたドはまりするという奇跡を起こす。「恋の渦」は再現性がなく、役者としての知名度のないメンバーたちからこそ、誰に対しても感情移入ができる「オレたちの映画」である。

もしこの映画をはじめからプロの集団がつくろうとしていたら、どんなアウトプットになるだろう。それはつまり、ワークショップだからこその要素をあぶり出す作業であるが、おそらく単純な比較はできない。お勉強するよりは手を動かそうぜ。なんなら学びながらつくってしまおう。そうして生まれた作品が結果として傑作になるということなのだろう。

「編集」にもワークショップがある。元マガジンハウスで現在はランドスケーププロダクト所属の編集者、岡本仁さんが編集ワークショップを主宰している。岡本さんといえば、ローカルに関心を持たれていて、都道府県の一つにフォーカスを当てた案内本でもおなじみ。ぼくは「香川はおおらか」を一冊抱えて香川県を巡って大満足だった。

その岡本さんの新著に「みんなの鹿児島案内」がある。先月、購入して読み進めるとクレジットに岡本仁+グッドネイバーズカレッジという表記があった。つまりこの鹿児島案内本はワークショップを通じて制作された本というわけだ。

調べてみると、岡本さんがここ数年はずっとワークショップでの本づくりに携わっていて、2019年の発行に向けた代官山の会報誌を編集するワークショップを開くということだった。その説明会がまさに昨日あったので参加した。

編集とは決めていくことの連続であり、ずっと選択をしていく。十名いれば十通りの選択がある。これはぼく自身、ほぼ日の塾で学んだことの一つ。岡本さんいわく、ワークショップの本づくりにはルールはないという。そのときのテーマ、そしてメンバーによって、つくり方は無数にある。ちなみに鹿児島案内は、まずメンバーが非公開のブログに記事をどんどんアップしてゆき、それらをまとめるような方法で編集していったそうだ。

受け手が学びを得られるのはわかる。19年のテーマである代官山の会報誌においてもフリーペーパーではなく、既存の機関誌であり、売り物なのだ。そこに深入りすることで得られることは大きく、魅力的だ。あと関心として、主宰の岡本さんのそのモチベーションとなる原動力の源は、どこにあるのかということ。

当然ながら、プロの集団でつくった方がいろいろスマートで手間なく、いいアウトプットができるはずなのである。ワークショップには参加費がかかるが、儲けという意味ではまったくもって合理的ではない。そこが目的では続かないつくりと見受けられる。岡本さんがあえてワークショップを「選択」する意味に、自分も参加しながら迫ってみたい。

全員が参加できるわけではない。少人数性。600字程度のエッセイの課題が出た。テーマは「ぼくの好きな東京の風景」。岡本さんらしいど真ん中の球がきたぞ。やるかどうかの選択をしよう。

hillsideterrace.com