DEPPA少年の日記

某テレビ局の会社員。27歳。「小説だからこそ本当のことを書ける」という小説家の言葉を参考に、あえて匿名でブログを書いています。28歳の誕生日までのカウントダウン方式を採用。

273日(80年代の香りを探して)

自分の生まれていない時代だからこそなのか。
80年代には一種の憧れがある。バブルという景気としての特殊性、そこから付随して生まれたカルチャーの数々。フジテレビのサブカル自体をも飲み込んでおもしろがる勢い。とんねるず的なもの。トレンディ、素人、女子大生。

登美丘高校のバブリーダンスやワイモバイルのCM、色物としてのベット・イン。近年でもファッションはじめとしたカルチャーとしてのバブルにスポットが当たっている。まさに色物として、不定期でやってくる懐古ブーム。80年代とは、日本全体で懐かしさを共有できる、みんなのコンテンツになっている。新番組「石橋貴明のタイムトンネル」なんかは、まさにそういうねらいだ。

コラムニストのしまおまほさんのオススメ漫画に「アイドルを探せ」がある。東京で一人暮らしする女子短大生の主人公が、恋愛に遊びに、若い人生を謳歌する様を描く内容。とにかく時代の香りを体感できるというしまおさんの推しで、メルカリで全10巻を購入、さっそく読んでみた。この作者の吉田まゆみさん表現そのものかもしれないが、感じたことを少々。

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陽と平和の世界観

85年が舞台となっていて、その時代の加減もちょうどいい。こっからもうひと盛り上がりしていくかんじ。物語の始まりはグアム旅行から。圧倒的な明るさと、このままずっと続くような陽気で平和な世界が、地続きにあるイメージ。

抽象的な話になるが90年代の宮台真司的な「終わりなき日常」の影はない。そこに「停滞」の空気がないのが新鮮だった。登場する広告代理店もラジオ局に務めている人も、みんなケーキがいい。

優柔不断と草食のちがい

登場人物のキャラクター同士の恋愛関係がメインの話になっている。当然、すれちがいもあれば葛藤もあり、何かしらのアクシデントによって、話の推進力が生まれる。男女の関係模様は振り子のように、いったりきたりする。じらす。

やさしさゆえの優柔不断のような場面がいくつかあるが、現代のいわゆる草食的な人との接し方や、また無気力さの性格を持った人物は存在しない。真剣に遊びと恋愛のはざまを行き来し、悩む。つまり複数人から一人に絞れないことへの優柔不断であって、草食男子の概念とは一線を画している。

思えば30年以上も前の作品である。のめりこむように読んでいる自分もおもしろい。この漫画のおもしろいところは、当時のカルチャーや流行、イケてる芸能人、言葉遣いが「ナウい」ものとして描かれる。逆に古さを感じさせないというか。当時の風俗がたしかにぎゅっとつまっているような作品だ。

オムニバス形式の「ボーイズ・ビー」ともまたちょっとちがう。「アイドルを探せ」80年代を体感していない世代こそ、ぜひ一読いただきたい。トレンディドラマなども、いま観ることで発見できることはあるだろう。