DEPPA少年の日記

某テレビ局の会社員。27歳。「小説だからこそ本当のことを書ける」という小説家の言葉を参考に、あえて匿名でブログを書いています。28歳の誕生日までのカウントダウン方式を採用。

327日(はじめての木ノ下歌舞伎、勧進帳)

神奈川芸術劇場で勧進帳の舞台を観た。
勧進帳といえば歌舞伎のイメージがあるけれど、現代舞台。古典を現代のアプローチでチャレンジをする木ノ下歌舞伎の作品だ。

常磐津の道に進んだ知り合いから木ノ下歌舞伎の存在を知って、まず演出家のトークショーへ行った。そこで実際の歌舞伎を完コピする練習があるとか、現代にアレンジする塩梅のむずかしさなどを聞いてがぜん興味を持った。期待を持ちながら初めての観劇。どんな役者が出演するのか、前情報もいっさいなし。

 

そもそも勧進帳も話の内容としては大枠は理解していたが、歌舞伎の勧進帳を観るのも初めてだった。ここは事前に映像でいいから体験しておくべきだったなあと思っている。比較して語ることができたのだけど、これはまあ仕方ない。

 

勧進帳は、シンプルなつくりで理解はしやすい。兄の頼朝に追われた義経は、弁慶とともに奥州藤原氏のいる東北へ逃げる。山伏に変装して移動していたが、噂が広まっており、ある関所で警戒態勢にあった役人に怪しまれる。そこで弁慶が機転を利かせて、何も書かれていない勧進帳の巻物をそらんじてみせる。それでも役人に「義経に似ているぞ」と言われれば「似ているお前が悪い」と、弁慶は変装した義経を叩き、「義経本人に対して、そこまではできないだろう」と、役人を信じ込ませ、その場をしのいだという話。

 

そのうえで、どんなアレンジがあったか忘れぬうちに。

 

・まず役者のキャスティング。弁慶が外国の方。あえて片言の日本語を話す。圧倒的な存在感。「~とモウシマース!」。はじめは観客の笑いを促しつつ、徐々に役として、はまって見えてしまう。そう見せるための俳優としての力。役人との問答の応酬は圧巻だった。素敵な俳優さん。あと、義経の役者はおそらく女性。こちらも味が出ていた。

 

・ちょっとした小物を現代として表現されていた。関所で下に就く者の一人が序盤いきなりレッドブルを買ってくるところから始まる。終盤で役人が振る舞うお酒や食事も現代のものに置き換えられていてひと笑い。持参するラジオ。これがまた、利いていた。

 

・要所でかかる音楽がよかった。テンポが変わる曲に合わせて演者の動きも変わる。時間の経過や、その場の緊張感がうまく表現されていた。途中、演者が歌うオリジナル?の楽曲は、ファンキーモンキーベイビーが歌いそうな、良い曲だった。

 

・写真素材でなんとなく知っていたが、役者の衣装は黒で統一されている。現代のまま。髪型も。お笑いの文脈でいえばラーメンズとかの類い。そもそも現代劇はシンプルな色の衣装が多いのか。数珠や扇子など、こだわりがあるんだろうな。

 

・役者の数を最小限に抑えている。関所の役人の下に就く者たち4名が、義経・弁慶の下に就く4名でもある。いったりきたりする演出はおもしろかった。義経、弁慶、役人、下に就く4名。出てくる演者は、すべて合わせて7名だけ。歌舞伎の場合はどうしているのだろう。

いやー、よかった。