DEPPA少年の日記

某テレビ局の会社員。27歳。「小説だからこそ本当のことを書ける」という小説家の言葉を参考に、あえて匿名でブログを書いています。28歳の誕生日までのカウントダウン方式を採用。

375日(東カレの東京女子図鑑企画が、手紙に役立つ可能性)

手紙を書くこと。
なかなか紙に手書きでこしらえる機会は減っている。世代としては、そもそも手紙の文化に触れてこなかった。しいていえば年賀状くらいか。

手紙の温かみ、素敵であること。ここはわかっているつもり。でも、どうやって書けばいいのかわからない。そんな方のために「Pen」が何年か前に手紙特集をしていて、Kindle版も現在発売してくれている。手紙の達人と呼ばれる著名人の実際の手書きの手紙をみることができる。読んでみて感じたのは、手紙とは相手と自分のストーリーだ。

そして同時に、東京カレンダーの企画「東京女子図鑑」を思い出した。相手と自分の関係性を自分ゴトとしてストーリーに落としこむこと。もしかすると「東京女子図鑑」の口語調で叙情的な語り口は、参考になるかもしれないなって。

そもそも「東京女子図鑑」は内容は置いておいて、企画として優れているとぼくは考えている。カンタンに説明する。一言でいうと「都内のグルメなお店を小説仕立てで紹介するウェブ記事」だ。映像作品では、プロダクトプレイスメントという、商品をさらっとPRする手法がある。それを逆手にとったおもしろい企画。

というのも、「小説仕立てのウェブ企画」という枠を飛び越えて、扶桑社では書籍化、Amazonプライムでは、水川あさみさん主演、タナダユキ監督の座組みで映像化した。映像化も、よくできていると思う。

メインの女性主人公はウェブ企業の就職をきっかけに地方から上京。東京でどう生きていくか、物語はそこから始まる。年を追うごとに節目で住む場所を変えていく。三茶、恵比寿というように。仕事も恋愛も。そして記事では、そのときのシチュエーションでグルメなお店の名前がさらっと出てくる。「この文脈で出てくるお店は褒めてないだろ!」というパターンもあるので、それはそれでおもしろい。

リアルでイタい。だけどちょっと覗いてみたくなる。梅木さんという方がウェブのプロデュースに入ったのも大きかったのだろうか。いまや本誌(紙媒体)が「東京女子図鑑」のような打ち出しをするようになった。紙がウェブに引っ張られているというか、影響されているというか。正直ここは、賛否両論ある。

ただウェブ記事だとさらに派生企画もよくできている。たとえば「東京悪女伝説サエコ」。主人公サエコの一人称の語りではない。周囲の関係者がリレー形式で過去を振り返る語り口で物語が進んでいく。大学時代はサークルの後輩目線で語られるようなイメージ。湊かなえの「告白」のようだ。

他では「東京女子図鑑」で女性主人公が途中で付き合う男性が主人公の物語もある。「いつかティファニーで朝食を」における「創太郎の出張ぼっち飯」のような存在。話がクロスしていく様は、あらためてよくできているなと思う。

こういった広がりの展開は、いろいろ応用できるなあと。リアルだからこそ若年層に受け入れられたわけだけど、「なんとなくクリスタル」やホイチョイ的な切り口とまたちがった80年代、90年代版のような企画もみてみたいな。とんねるず木梨さん監修みたいな。

話がずれた。悪女伝説におけるサエコへの登場人物の語りは、ぼくのなかではサエコへの手紙そのものだ。ぼくは実際に誰かに手紙を書いてみる企画を体験したのだけど、東京カレンダーのウェブ企画を読んでいたことが、語り口の方法として、参考になった。無料で読めるものがほとんどのはずだったので、ぜひチェックしてほしい。